1点透視法および2点透視法の各々の性質を理解する事で、「どういうスケッチパースにするか?」例えば、デザインや設計意図を伝えるためには、1点透視で描いたスケッチパースの方が良いか? または2点透視の方が良いか?──を決定し、適切な情報を伝えられるスケッチパースとして選択しましょう。
それでは具体的な描き方を学んでいきましょう。
今回は「リビング編」ですので、リビングの図面をもとに1点透視法で描く場合と2点透視法で描く場合の2種類を学んでいきます。
1点透視法は、ひとつの消失点(V.P)に向かって線や面が向かう立体描法ですが、目を向けている正面の壁面は図面通りの姿になっているのが特徴です。
つまり、正面の壁面は展開図のそのままの写しとなり、左右両側の壁や床面、天井面にパースがつく形となるわけです。
また、1点透視法は壁面が3面(正面と左右の面)見えますので、絵の中の情報量が多く、空間的な広がり感がある絵になります。
例題図面にもとづいて実際に書き方を学んでいきましょう。
- ソファ=W1800×D900×H800(SH400)
- テーブル=W900×D900×H400
- AVラック=W1800×D450×H500
- 天井高さ=2450
- サッシ(ハキ出し)=H2000
- サッシ(腰マド)=H1200(FL+800=サッシ下端)
※インテリアエレメント(照明、カーテン、絵画、小物、グリーン等)は自由設定とする。
- 仕上げ 床:フローリング
カベ、天井:クロス貼り
巾木(H=60)、廻り縁はある
1. まずは、書きはじめる前の下準備をします。
家具をレイアウトした平面図に、モデュール(910×910)の補助線を引きます。
この線により、レイアウトした家具の位置がわかり、絵を書く上での基準となり便利です。
モデュールが1000×1000や900×900等の場合は、そのモデュ−ル寸法にあわせて補助線を引きます。
2. 次にどの位置からどういう方向で見た絵にするかを決めます。
ここでは、内部建具(ドア)側のカベから、ハキ出し側の壁を見た方向のスケッチパースを書くことにします。
3. 1点透視法用グリッドシート(1)を利用して(プリントアウトして)、この図面にあわせたグリッドを作成します。
(※アイレベルはH=1500で床面が設定されているグリッドシートです)
ダウンロード
PDFファイル
sheet002i_01.pdf(200KB)
パソコンにAcrobat Readerが入っていない場合は下記アイコンからダウンロードしてください。
(a)グリッドシートの縦線(壁面)のピッチは、S=1/50のスケールで910mmのピッチとなっています。
また、横線(床面)のピッチは、絵の中での910mmピッチとなっています。
(b)縦線のピッチにもとづいて、ハキ出しサッシがある壁面の展開図をグリッドシートのスケール(S=1/50)にあわせて書き込みます。
(※グリッドシートを下敷きにして、トレーシングペーパーを上にのせて書き込んでいきます。)
例題の書き方は、左右の壁が均等に見えるよう、V.Pを正面の壁の中心(中央)に設定しています。
1点透視法にて左右いずれかの壁面を強調したい場合は、V.Pの位置を左右にずらす方法があります。
V.Pを中心から右へずらすと、左の壁面が見えてきます。(強調されます)
V.Pを中心から左へずらすと、右の壁面が見えてきます。(強調されます)
(c)アイレベル(E.L)を設定し、V.Pをポイントします。
V.Pから各々の線を引いてゆきます。
ソファの姿図
4. グリッドができましたら、それをもとに家具を書いてゆきます。
まずはソファを書いてみましょう。
ソファのサイズはW1800×D900×H800(SH400)となっています。
また、補助線を引いた平面図にてソファの置かれている位置を確認します。
グリッドの四角のどの位置にソファがあるかを見ておきましょう。
平面図
5. ソファの高さをポイントしてゆきます。
高さの基準をとるところは、正面の壁でとります。
この壁は、正確にS=1/50のスケールで展開図化されているので、ソファの『側面図』をS=1/50で書きます。
ソファの側面図を書く場合、外形寸法しかわからず、アームの厚みや、クッションの厚みが不明なのが当然だと思います。
この場合は、姿図をよく観察して「だいたいこれぐらいだろう」という判断で、自分で作製して結構です。
6. V.Pからソファの『側面図』とを結ぶ線を引き、床面(平面図)のソファの位置のグリッドまで線を引きのばします。
※この段階では、大きなソファのボリュームを書き、スケッチパース上でのソファの位置決めをするので、V.Pと結ぶソファ『側面図』のポイントは四隅でよいです。
7. 次に、平面図に引いた補助線(グリッド)に従って、床面のグリッドのソファの位置の四隅から垂直に線を引きます。
第1回講座で学んだ『1点透視法で書く直方体』の書き方を思い出しましょう。
6.で引いた線との交点にて、直方体(ソファのボリューム)を書きます。
8. ボリューム出しをしたソファの直方体に詳細を書きこんでゆきます。
SH=400(シートハイ)、アームの厚み、背クッションや座クッションです。
SH=400のライン、背クッションや座クッションのラインは、V.Pと結んだ線で、またアームの厚みは任意で各々線を引きます。
背のクッションの垂直ライン及び座のクッションの水平ラインを書き、その交点とV.Pを結んだ線を引いて、背クッション、座クッションの完成、及びソファの完成です。
9. その他の家具(テーブル、AVラック)も、5.〜8.の書き方と同様に、平面図での位置の確認〜正面の壁に高さ(側面図)を書く〜ボリューム書き(立方体、直方体)をする〜詳細を書き込む、の手順で書いてゆきます。
■テーブルの場合
■AVラックの場合
■腰窓サッシ、薄型テレビの場合
10. 照明を天井面に書き入れます。これも、平面図に引いた補助線(グリッド)で位置を確認し、各々書き入れてゆきます。
円の書き方は、第1回講座で学んだ書き方を思い出しましょう。
11. コーディネート上必要なエレメント(カーテン、絵画、植栽など)も書き入れます。
1点透視法の場合、スケールを正確にあたれるのが正面の壁になるため、「基準線=高さを正確にポイントできる線」は正面の壁の両端になります。
ここでの基準線の高さは壁の高さになります。
基準線に、各々の高さをポイントし、V.Pと結び、グリッド上の任意の位置に書き入れます。
12. 下書きが整ったら、トレーシングペーパーをのせて仕上げ書き(インキング)をします。
使用するペンは、教材グッズの中にある0.4mmペンを使います。また仕上げの素材感を出す線は0.1mmペンを使います。
(※絵が小さい場合は、下書きを拡大コピーし、サイズを大きくしてからトレーシングペーパーをのせて仕上げ書きをするとよいでしょう。)
1点透視法では、見る視点(自分)の正面にくる面は全てそのもの姿図になっているので、水平〜垂直線はパースはつかない事を覚えておきましょう。